サッカーに必要なスプリントとは?
2019/07/06
サッカーに必要なスプリントとは?
サッカーにおけるスポーツ科学
サッカーに必要なスプリントとは?
Jens Bangsbo著『Fitness Test in Football』よりサッカーにおけるスピードトレーニングとテストの事例をご紹介致します。
サッカーに必要な「スプリントを繰り返す能力」
サッカー(エリート選手)においてトップクラスの選手と中級レベルの違いは、試合中のスプリントの持続時間や距離の長さではなく「スプリントの回数」です。トップクラスの選手のほうが明らかに多くのスプリントを行っています(詳しいデータに関しては書籍をご覧下さい)。
サッカーの試合中のスプリント距離は、1本あたりほとんどが20m以下です。したがって、ほとんどのスプリントは加速できる時間が短く、最大スピードに到達することはありません。※最大スピードまでの到達には50~60m必要と言われています。
瞬発的なスプリントを何度も繰り返すための能力は、1回のスプリントの後に素早く身体を回復させられる能力と関係しています(間欠性回復力)。スペインのプロチームを対象とした研究では「試合開始から終盤にかけてのスプリント回数の減少」と「30m反復スプリントテストにおける疲労指数」に有意な相関関係がみられました。
▼試合・練習中のスプリント回数やスピードのデータを収集するGPS計測システム
直線のみではないサッカーのスプリント
サッカーの試合中のスプリントのほとんどは、曲線もしくは鋭い角度でのターンを伴って行われます。例えばフォワードの選手は、鋭い方向変換によって相手ディフェンダーを振り切る必要があります。また、ディフェンダーも相手やボールの動きに対して方向転換を伴いながら速く走ることを余儀なくされます。
したがってサッカーにおいてはスプリント能力における「短い距離を繰り返し走る」側面と「方向転換をしながら走る」側面をトレーニングすることが重要となります。
曲線を用いた反復スプリントテスト「Curved Sprint Test」
では、「実際の試合中に何回もスプリントを繰り返す能力」と関係の深い「方向転換を伴う反復スプリントテスト」について紹介しましょう。
方向転換を行いながらスプリントを繰り返す能力はCurved Sprint Testによって評価することが可能です。
テストの目的:方向転換を伴うスプリントのスピード(タイム)と持続能力を評価します。
方法:選手は積極的リカバリーのための25秒間を挟んで7回の全力スプリントを実行します。
(添付資料をご参照下さい。)
テストの評価はベストタイム、ワーストタイム、7回のスプリントタイムの平均値及び疲労指数で行います。(詳しくは本書を参照下さい。)
このテストは測定のみでなく、トレーニングとしても行われています。
最後に、大学サッカー部のトレーニングでCurved Sprint Testを実施した例を紹介します。
10m、20m、30mの各ポイントに光電管(ワイヤレスタイム計測器:WITTY)を設置し、リカバリーシャトル機能(セット間25秒休憩×7セット)を用いて、各区間及びコース全体のタイム計測を行いました。
セット毎にタイムが落ちていく選手や後半区間のみ顕著にタイムが落ちる選手、7本目までほぼ変わらず同じタイムを維持する選手、ポジションやレベルによるタイムの違い等、チーム内で様々な特性や傾向を発見することができ、個人の強化すべき点が明らかになったことで目標を持ってその後のトレーニングに取り組むことが可能となりました。
選手個々のサッカーに必要な能力を効率的に強化するために、是非一度お試し下さい。
追記:Curved Sprint Testの結果の一例をご紹介します。
約30mの曲線スプリントを7本、毎本間25秒の休憩を挟んで行いました。
最高記録はK選手の方が速いですが、7本の平均ではT選手の方が速いことがわかります。
休息時間や本数、距離などを変えて行うと、さらに違った傾向が見られるかも知れません。