レジスタンストレーニングの『質』(1)

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レジスタンストレーニングの『質』(1)

2019/08/07

ウエイトトレーニングにおけるスポーツ科学

レジスタンストレーニングの『質』(1)

【パフォーマンス向上のためのレジスタンストレーニングの『質』はリフティングスピードのモニタリングによって向上する】



 アスリートのパフォーマンス向上のためにレジスタンストレーニングを指導しているトレーニング指導者の中には、セッション中のリフティングスピードを測定したことがないという人がまだまだ多いと思われるが、ここではリフティングスピードをモニタリングすることの意義とその活用法について、最近の研究結果に基づいて解説しよう。

 

◆アスリートには無駄なトレーニングに費やしている時間は無い

 アスリートにはやらなければならないことがたくさんある。技術練習や戦術練習やミーティングだけでも効率よくやらないと、必要なことを取りこぼしたり、時間が足らなくなったりして準備不足のまま試合に臨むことになる。コンディショニングもウエイトルームだけでは十分ではなく、長い距離を走る、ダッシュを繰り返す、プライオメトリクスを行う等々といったトレーニングも必要であり、いかに確実にそれらの効果を上げられるかが問題となる。そんな中で、ウエイトルームで行うレジスタンストレーニングだけがあいまいな目標管理で効率を追求しなくてよいという話にはならない。現代のスポーツで勝利するためには「超」効率的トレーニングが求められているのだ。

 

◆セット中、セッション中にリフティングスピードは低下する

 スペインで行われた研究で、3~5年という豊富なレジスタンストレーニング経験のある消防士18名に対して、全力のスピードでスクワットとベンチプレスを行わせ、リニアトランスポジションデューサーを用いてスピードをモニタリングし、1レップ毎に発揮したスピードをフィードバックして、リフティングスピードが落ちないように大声で励ました。しかし結果は図1の例にあるように、スピードは著しく低下した。この実験ではすべて5分レストの3セットで12RM、10RM、8RM、6RM、4RMについて行われたが、すべての重量のセットでスピードが低下し、1レップ目から最終レップまでにスクワットで最大46.5%、ベンチプレスで最大63.3%ものスピードが低下した。

 この実験ではそれぞれのRMで反復可能な回数よりも実際の反復回数をいろいろに変えたスピード測定も実施された。つまり、12RMでも12、10、8、6レップ、10RMでも10、8、6レップ、8RMでも8、6、4レップ、6RMでも6、4、3レップ、そして4RMでも4、2レップで行った。それでもスピードの低下を食い止めることはできなかった。



▲図1.ベンチプレスを12RMで12レップ×3セット実施した例。各セットで平均65.7%のスピード低下が見られ、セッション前に1m/sで挙上できたウェイトに対しては30.8%のスピード低下が見られた。

 

このような本人が発揮可能な最大スピードが出せなくなっているにもかかわらず、「ヘロヘロ」になってスピードが低下している状態でのトレーニングを何セットも継続することによって、スピードやパワーの改善がどれほど期待できるかはきわめて疑わしいと言わざるを得ない。一定レベルのスピード低下が確認できた時点でそれ以降のリフティングはやめて、十分回復させた後に、再度最大スピードを発揮する、というほうが明らかに効率的だと考えるのが自然ではないだろうか?

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