まだ反応なしのアジリティーテストですか?

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まだ反応なしのアジリティーテストですか?

2020/05/13

まだ反応なしのアジリティーテストですか?
 
NBAにおけるドラフトテスト
 バスケットボールの聖地 NBAでは,、毎年6月に開催するNBAドラフトというスカウティング事業を行っています。このドラフトではアマチュア選手をテスティングし、選手との契約交渉を行うものです。ここでは、選手のパフォーマンス、筋力、下肢のパワー、反応プロアジリティテスト、スプリント、身体組成などが測定されます。身長は2mを超える選手が多く、垂直飛びに至っては90㎝を超えるとてつもないフィジカルを持った選手が発掘されます。結果はインターネットにも公開され、この数値をもとに様々なチームが選手の獲得に動きます。これらのテストではバスケットボール競技に必要とされる能力を評価するために行われます。
 
 
NBAで行われる反応を伴ったプロアジリティテスト
 この中で2010年より、反応を伴ったプロアジリティテストが採用され、測定・評価されています。様々なスポーツで測定されるこのポピュラーなプロアジリティテストは、一般的に敏捷性を評価するために測定されます。しかし、NBAではもう10年も前からスタート反応を伴ったプロアジリティテストを採用しているのです。このプロアジリティテストでは、光電管(タイム計測用システム)を中央と左右両端に設置します。光電管にはLEDシステムが内蔵されており、合図を出すことができます。左右に設置してある光電管が光った方向にスタートし、プロアジリティテストを行います。これにより通常のプロアジリティテストでは測定できない反応を含めた評価を行うことができ、真のアジリティを測定することができます。
 
フィジカルテストによって競技レベルを区別することは可能なのか
 このように、NBAでも重視されていることからわかるように、多くのフィールドスポーツ競技では高い反応能力が必須であり、それを評価することは極めて重要です。いくつかの論文で競技レベルの差が通常のフィジカルテスト以上に反応能力に差が表れることを明らかにしています。
 R.G. Lockieらは バスケットボール選手を対象として、あらかじめ移動する方向が決定されている敏捷性テストと、信号に対する反応によって移動する敏捷性テスト が、プロフェッショナルレベルとアマチュアレベルの差を区別できるのかを、10mスプリント、反応なしのY字アジリティテスト、そして応を伴うY字アジリティテストを用いて調べました。Y字アジリティテストは下図のような形式で測定されました。反応あり条件では、選手が中間の TriggerGate を通過した瞬間に、左右の光電管に内蔵されたLEDが点灯した方向に方向転換して走りぬけます。反応なし条件ではあらかじめ被験者にどちらに曲がるか指示していました。
 
 
R.G. Lockie et al., Planned and Reactive Agility Performance in Semiprofessional and Amateur Basketball Players, International journal of sports physiology and performance. International Journal of Sports Physiology and Performance, 2014, 9, 766-771.
 
 
反応が含まれると競技レベルの差が如実に表れる。
 
 その結果、10mスプリントや反応を伴わないY字アジリティテストには競技レベルによる有意な差がみられず、反応ありのY字アジリティテストにのみ有意な差が見つかりました。このことから競技レベルを区別するためには、反応という要素が非常に重要だということがわかります。したがって、他のフィールドスポーツにおけるトライアウトなどでもこのような反応要素を測定評価するべきです。
 
本当に必要なアジリティ(敏捷性)とは
 この研究では各テスト同士の関係性も調べられており、10mスプリントと反応を伴わないY字アジリティテストの間には高い相関関係があったのに対し、これら2つのテストと反応を伴うY字アジリティテストの間には相関関係が見つかりませんでした。このことから言えるのは、10mSprint と反応を伴わないY字アジリティーテストでは似たような能力を測定しているということです。敏捷性のテストを行っているつもりでも、実は走る能力を評価しているだけだった可能性があります。逆に反応要素が入ることにより、相関関係がみられなかったことから、反応を伴うY字アジリティーテストでは、走る能力とは別の認知機能や、知覚情報に反応して瞬時に爆発的に方向を転換する能力などを評価できる可能性があります。  
 このことを踏まえると、あらかじめ決められたルートを走る方向転換走を行っても、実際に競技で必要となるはずの知りたい能力を正確に評価できないのかもしれません。スポーツの場面では多くの場合、複数の選択肢がある中で瞬時に選択を強いられます。この判断を即座に決定できるか、そしてその決定に基づいて瞬時に身体をコントロールできるか、これが競技レベルの差に表れるのかもしれません。
 
より競技に特化した能力の評価をするためにはテストに反応要素を含めることが必須
 ドラフトやタレント発掘によるテストは世界各地で行われ、選手の評価・選抜が行われます。上記のような研究結果を踏まえるならば、フィールドスポーツ競技における測定・評価には、反応要素を踏まえることが必須であり、それによって、より競技力の高い選手を見つけることができるかもしれません。
 
日常的に反応アジリティーを測定・評価しトレーニングするために
 反応能力を加味した敏捷性の測定は、Dahsr React や WITTY-SEM を使用することで面倒なセッティングをすることなく、簡単に実施できます。これらの機器は、ドラフトやタレント発掘としてだけではなく、NFL, NBA, MLB、NHLさらには、世界各国のトッププロサッカーやプロラグビー、テニス、バレーボール等々で、フィジカル能力と同時にダイレクトに認知機能を刺激する日常的なトレーニングとしても使用されています。是非ご活用ください。
 

 

 

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引用文献:R.G. Lockie et al., Planned and Reactive Agility Performance in Semiprofessional and Amateur Basketball Players, International journal of sports physiology and performance, 2014, 9, 766-771.

齋藤朋弥
エスアンドシー株式会社 営業・企画
JATI-ATI、スポーツパフォーマンス分析スペシャリスト、NSCA-CSCS
龍谷大学スキー部トレーニングコーチ

 

長谷川裕
龍谷大学スポーツサイエンスコース教授
スポーツパフォーマンス分析協会会長
日本トレーニング指導者協会名誉会長
エスアンドシー株式会社代表

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