サッカーにおける正確なスプリント測定の意義と方法

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サッカーにおける正確なスプリント測定の意義と方法

2020/07/21

齋藤 朋弥・長谷川 裕

サッカーにおける正確なスプリント測定の意義と方法

サッカーにおけるテクノロジーの革新
近年、様々な分野で技術革新があり、スポーツにおいても目覚ましいスピードで新たなテクノロジーが開発され、パフォーマンス分析やトレーニングの評価に活用されています。こうしたテクノロジーの進歩は、実際にスポーツをしている選手や指導しているコーチにとって有用なだけでなく、試合を観戦する一般の人々にも大きな利点をもたらします。サッカーでは、Jリーグの試合をビデオ分析ソフトを使用し、選手の走行距離やスプリント回数などをランキング形式で掲載しているため、ファンの間でも見ていて面白い指標が簡単に確認できるようになりました。様々な指標が散漫する、そんな時代だからこそ、測定されている項目一つ一つを深く正確に理解する必要があります。例えば、スプリントにはどのようなイメージがあるでしょうか。ダッシュ、速いランニング、最大走行速度での動作、直線ダッシュ、曲線ダッシュ、人によって様々かもしれません。今回はこのスプリントという動作に着目し、スプリントとは何なのか? なぜスプリントが必要なのか? どのように評価したらいいのか?について説明いたします。


サッカーにおけるスプリントの定義と特徴
スプリントは英語では、全力疾走や短距離走、全力で走ることを意味し、様々なスポーツ場面で使われている用語です。サッカーでは一般的に時速24㎞以上の走行をスプリントとして定義しています(この定義は国やリーグなどによりやや異なりますがほぼこれくらいのスピードです)。スプリントは試合中に長時間行われることは滅多になく、2~4秒ほどの短い時間で完了し、静止状態からですと、走行距離はおおよそ20m~30mほどでスプリントの定義に達します。そして、いかにスプリントまで速く達することができるかも重要な要素になります。



最大走行速度に達するまでの時間をいかに速くするか
最大走行速度の80~90%は約2~3秒後には達成されることから、サッカーにおいて、この2~3秒の間にどれだけ速度を爆発的に増加させることができるかがカギとなります。やや古いデータですが、2009-2010 UEFAチャンピオンズリーグ決勝では全選手の平均トップスピードがインテルで秒速8.9m、バイエルンで秒速9.2mでした。また、2009年のイタリア対ブラジルの親善試合では、イタリアが秒速9.0m、ブラジルが秒速8.9mでした。このデータに基づくと、一流サッカー選手が試合中に到達する最大スプリント速度は、秒速9m(時速32.4㎞)というのが一つの基準となります。この秒速9m(時速32.4㎞)という速度はトップレベルのサッカー選手の30m走のスプリント測定では、速い選手で約12m、遅い選手では20mを過ぎてから出現することがわかっており、20m以内にこの速度に達するためには、10mテストにおいて1.7秒前半、遅くても1.8秒以内で走る必要があります。そのためには静止状態から爆発的にスタートし一気に加速する能力がハイレベルなスプリントをするためには重要な役割を持ちます。

 


正しくスプリントの定量化するために、正確な測定方法を選択する
最新のテクノロジーを用いたスプリント測定は、かつては海外の一部のトップクラブに限られていましたが、今や、日本国内のサッカーチームでもプロアマ問わずに、WITTYやDashrといったタイム計測デバイスを使用して測定評価が行われています。この2つの機種に代表されるような赤外線やレーザー光線を用いて電気的に測定する方法は、測定者による測定誤差を限りなく排除することができるため、正確なスプリント測定を行うためには不可欠のデバイスとなっています。

ストップウォッチ計測は目視でのスタート確認や手動ボタンなどにより、計測タイムに制御不可能な誤差が生じることは明らかであり、その誤差を基にした評価では大きな判断ミスにつながります。10mで0.1秒の差があると距離にして1m近い差になり、サッカーの試合での1mの差というのは勝敗を分ける絶望的な差です。たとえ0.1秒という一瞬の誤差だったとしても、その誤差を可能な限り排除しなければ、少しでも高いレベルのパフォーマンスを目指して行われるトレーニングを確実に進めていくことは困難です。

ですから、正確な測定方法を用いることによってのみ、スプリントタイムを確実に0.1秒短縮するという目標に着実に近づくためのトレーニングを模索ことができるのです。そしてそのことがサッカーのパフォーマンスを向上させるための要因になります。

 

サッカーではいかにスプリントに速く達するかが重要
前述したように、サッカーにおけるスプリントは時速24㎞以上の走行であると一般的には定義されており、 いかに速くこのスプリント速度に到達するかが非常に重要で、動き始めが速くなることでマークがつきにくくなったリ、相手を置き去りにしやすくなります。こうした能力を測定するためには、10mスプリントであっても、5mのラップタイムを計って、初速をチェックするといった工夫が必要です。

サッカー選手において速く走れるという能力は、試合のどの局面、どのポジションにとっても極めて大きなアドバンテージであり、その能力を向上させるために時間を割くことが必要です。 そのために普段から10分の1秒、100分の1秒にこだわるスプリントテストを行い、選手を評価することが重要です。

信頼性と妥当性のある確かな計測に、是非WITTYやDashrをご活用ください。

 

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スプリントテストの測定・評価方法については下記ブログをご参照ください!

スプリント能力を高める反復スプリントトレーニングについてはこちらから!

https://sport-science.jp/blog/detail/20200721095704/

 

齋藤朋弥 t.saito@sandcplanning.com
エスアンドシー株式会社 営業・企画
JATI-ATI、スポーツパフォーマンス分析スペシャリスト、NSCA-CSCS
龍谷大学スキー部トレーニングコーチ

 

長谷川裕
龍谷大学スポーツサイエンスコース教授
スポーツパフォーマンス分析協会会長
日本トレーニング指導者協会名誉会長
エスアンドシー株式会社代表

 

参考文献

長谷川裕「サッカー選手として知っておきたい身体の仕組み・動作・トレーニング」ナツメ社、2014、p154-155.

 

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