スプリンターのための新評価時代到来
2021/06/25
かつて不可能だと言われてきた、100m9秒台。
世界で初めて9秒台が叩き出されてから半世紀、日本人も遂に10秒の壁を打ち破り、その後の連鎖は止まるところを知らず次々と9秒台の日本人スプリンターが誕生している。
先日の布勢スプリントにおいて、山縣亮太選手によって9秒95 (+2.0) の日本新記録が誕生したことも記憶に新しい。
◆タイム短縮のミッシングリンク
さて、100mのタイムを短縮するためには一体何が必要なのだろうか。
大きい加速度に高い最大疾走速度、長いストライドにピッチの多さ等々、時には風も味方につくだろう。
風はさておき、これらの数値は御存知のWITTYやOptojump Nextで簡単に測ることができた。
しかし重要な何かを測り忘れてはいないだろうか?
100mに限らず陸上競技の短距離種目は、みな揃ってスターティングブロックに足を掛け、スターターの発する号砲と共に大きく一歩空を舞う。
その間、リアクションタイムはおよそ0.15秒の世界。前述した山縣選手に至っては過去に0.116秒という驚異的な数字を記録している。
すなわち、リアクションに鋭い者は他者より一歩二歩と9秒台に近づくことができるのだ。
100mにおいて0.1秒がどれほど大きな存在であるかは、全スプリンターにとって周知の事実であり、これを削るために日々の鍛錬で最大速度を高め、フィニッシュラインでトルソーを突き出す。
◆感覚から実測へ
しかしながら、練習では何故かリアクションの0.15秒が見落とされがちだ。
決して、リアクションを改善するためのスタート練習を行わないというわけではない。ただ、音と共にブロックを蹴り、”今の出方はハマった” “今のは潰れた” と表現するだけに留まっている。全て感覚的で曖昧すぎるのだ。
それには非常に単純な理由がある。大会や記録会等を除き、リアクションタイムを測る機器が無かったからだ。スターターが雷管を鳴らし、黒い板越しに白い煙を見て手元のストップウォッチを押し込むような計測方法では、100m9秒の内に占めるリアクションタイムなど決して測りようが無かったのだ。
そこで今回、悩めるスプリンターのために、リアクションタイムを計測するための「WITTYスターティングピストル」が発表された。イタリアMicrogate社が開発したこのスターティングピストルは、WITTYと接続することで、号砲〜リアクション〜フィニッシュ までの各タイムを正確に計測する。
S&C株式会社 太田黒 郁聡・長谷川 裕 著