トレーニング指導現場でRFDを測定するには

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トレーニング指導者のためのパフォーマンス測定と評価 #2 RFD

2022/07/07

トレーニング指導者のためのパフォーマンス測定と評価

#2 指導現場でRFDを測定するには

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※上記記事はJATI EXPRESS No.85に掲載のものです。

※本文中の「VmaxproによるmRFD算出方法」は2022年6月以降「PeakRFD:コンセントリック局面全体の40ms毎のN/s」に変更されています。

 

【概要】

・科学的エビデンスに基づくトレーニング指導に関する日本学術会議の提言

・ラボラトリーとフィールドの垣根を超えたDXの発展

・現場でRFDを取得して指導に活かす時代の到来

・トレーニング指導におけるDXの推進

[ITやICTといったデジタル技術によって、かつて言われていた「科学と現場のギャップ」が急速に埋まり、むしろ相互乗り入れが進み、新たなトレーニングや指導の姿に変容しつつある]

[今後はデジタルを取り入れるだけではなく、データをどう生かすか、それによっていかにトレーニング指導の効率を高められるか、という競争に移行していくものと思われる]

トレーニング指導分野におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)が急速に推し進められて来ている。前回取り上げたVBTのために利用される機器にも、新たなサイエンスとテクノロジーが投入され、ますますトレーニング指導とそれに関する科学の融合が進められつつある。今回は、そうしたテクノロジーの最新情報をお届けする。

 

科学的エビデンスに基づくトレーニング指導に関する日本学術会議の提言
 昨年6月18日、日本学術会議はスポーツ庁長官からの審議依頼を受けていた新しい時代のスポーツの在るべき姿について検討した回答を「科学的エビデンスに基づく『スポーツの価値』の普及の在り方」と題する提言として提出しました。そこでは、「科学的に測定されたエビデンスに基づいて、選手が練習し、コーチがアシストされ、評価される時代が到来しつつある」と述べて、スポーツトレーニングにおいて科学的なデータの測定とそのエビデンスに基づいて指導を進めていくことの重要性を指摘しています1)。
 スポーツ行政を統括する行政のトップ機関からの審議依頼に対して、学術会議というわが国の最高レベルの科学者の組織が何をいまさら、という感が強いものでした。とはいえ、一民間NPO団体であるJATIが設立以来15年間ずっと主張し続けてきたことがやっと、国のレベルでも表明されたわけで、それだけ、これまでのスポーツのトレーニングや指導において、科学やエビデンスやデータや測定というものがほとんど顧みられることなく推移してきたという現状に対する危機感と、今後の方向性が明確に示されたという点では歓迎すべきことであると思います。
 と同時に、JATIはこうした方向性をリードしてきた団体として改めて、スポーツのトレーニング指導における科学的なデータというエビデンスに基づく指導を推し進めていくことが求められます。
 この提言の中では、大企業や大学における高度な研究機器を用いた分析例や、数十年にまたがる長期的なデータ蓄積と分析、あるいは医学的調査といった大掛かりな事例が紹介されています。提言の目指す新たなスポーツの在り方を実現していくためには、興行としてのプロスポーツはもちろん、もっと身近で日常的な学校スポーツや地域のスポーツクラブにおいて、データ測定によるエビデンスに基づいた指導が求められます。
 それによってこそ、この提言に示された「科学的エビデンスに基づく政策を明確化し、スポーツの指導や練習の方法を変えていくこと」がより広範なスポーツの分野において可能となると思われます。

 

ラボラトリーとフィールドの垣根を超えたDXの進展 
かつては、精度が高くて信頼性のある研究のためのデータ取得には大掛かりで時間がかかるテストをラボラトリーで行う必要があるが、精度は低くなるものの現場で、簡単に取得可能ですぐに指導に使えるデータはフィールドテストで取得できる、といった区別がされていました。
 が、今日ではITやITCといったデジタル技術の急速な進歩により、その差がどんどん縮まっています。そして現場のトレーニング指導者が日常的に使用し、コーチや選手とデータを共有することによってさまざまな重要な意思決定に使われている機器が、科学的な研究論文にも用いられるようになってきています。逆に言うと、科学的な研究論文で用いられるような機器類を現場とのトレーニング指導者やアスリートが日常的に使えるようになっているということです。
 ITやITCといったデジタル技術によって、かつて言われていた「科学と現場のギャップ」が急速に埋まり、むしろ相互乗り入れが進み、新たなトレーニングや指導の姿に変容しつつあります。まさにトレーニング指導分野におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)が急速に推し進められて来ています。
 そうした中、前回取り上げたVBTのために利用される機器にも、新たなサイエンスとテクノロジーが投入され、ますますトレーニング指導とそれに関する科学の融合が進められつつあります。以下、そうしたテクノロジーの最新情報をお届けします。

ITやITCといったデジタル技術によって、かつて言われていた「科学と現場とのギャップ」が急速に埋まり、むしろ相互乗り入れが進み、新たなトレーニングや指導の姿に変容しつつある。

 

現場でRFDを取得して指導に生かす時代の到来 
RFD(Rate of force development)という概念が日本のストレングストレーニングの世界に認知されたのは、1995年にHuman Kineticsから出版されたザチオールスキー著の『Scienceand practice of strength training』によるところが大きく、私もそれ以来さまざまなところで機会がある毎に、パフォーマンスにとって重要なのは最大筋力や最大挙上重量ではなく、RFDであることを力説してきました2)。
 RFDに関する膨大な研究によって、このことはほぼ真実であることが確かめられ、本誌でも、菅野副理事長によってRFDの重要性やRFDに関与する要因、さらにはトレーニングについて詳しく解説されていることは皆さんよくご存じのところです。
 ではこのRFDはどうすれば測定することができるのでしょうか? 現場で簡単に取得することができれば、こうしたRFDに関する科学的知見をすぐトレーニング指導に生かすことが可能となります。
 かつてRFDは、数百万円から1千万円もするような、データ分析の難しいフォースプレートやアイソキネティックマシーンがないと測定することは不可能でした。しかし、数年前からVBT機器のゴールドスタンダードとされているGymAwareというリニアポジショントランスジューサーの登場によって現場レベルでRFDを取得できるようになりました。

 

(1)VmaxproによるRFDデータのリアルタイムモニター
 とはいえ、GymAware自体まだ数十万円し、なおかつクラウドシステムを利用しないとRFDデータにはアクセスできないという制限がありました。しかし、ドイツでVmaxproというI M U タイプ( 慣性計測ユニット《Inertial Measurement Unit、略してIMU》タイプ)のVBTデバイスが開発され、日本国内でもこの10月末より8万円ほどで購入可能となっています。Vmaxproは数ある世界のIMUタイプの機器の中でも極めて高い妥当性と信頼性が複数の論文で証明されているハイレベルな機器です。
 このVmaxproによって測定されるRFDは、正確にはmRFD(movementRFD)といい、従来のRFDデータの収集には後述するようなアイソメトリックの筋力発揮を必要としたのに対し、スクワットやベンチプレスといった一般的な動的な筋活動を伴うエクササイズにおいてRFDデータを取得します。
 コンセントリック局面開始後の260msecまでの20msecごとに筋力のつ取増加量を測定し、その最大値をN/s値で表示します。例えば、mRFDをリアルタイムで表示させ数値データを音声によるフィードバックにして選手にこのmRFDを高くするように指示して動作を反復させ、セット終了後に、1レップごとのmRFDと平均速度あるいはピーク速度とを比較するという分析が簡単にできます。
 またそれぞれのレップの可動範囲全体にわたる速度と加速度の変化を重ねて表示させることが可能なVelocityChartという曲線グラフを表示させて、動作範囲のどのあたりで最大加速度や最大速度が出ているか、そしてその際のmRFDはどうだったかをすぐに確認することができます。VelocityC h a r tをリアルタイム表示させ、mRFDと見比べながら動作の質を検討することも可能です。しかもこれらはタブレットで撮影した動画と同期させて確認することができます。
 こうなると、mRFDの向上それ自体を直接的なターゲットとしてリアルタイムフィードバックしながら行うトレーニングという、これまで想像することすらできなかったトレーニング指導の新たな地平が切り開かれてきます。
 このようにmRFDを指標としたトレーニングは技術的には可能ですが、まだまだ実践的な研究情報は不足しています。その研究を押し進めるのは誰でしょう? それは他でもない皆さん方、現場のトレーニング指導者なのです。

(2)アイソメトリックミッドサイプル
 関節角度を規定し、大腿部前面の中央付近でバーを両手で保持し引き上げる際のRFDを測定するアイソメトリックミッドサイプル(Isometric Mid-Thigh Pull、略してIMTP)は、多くのRFD研究で用いられてきており、本誌84号でも菅野副理事長がデータを示して詳しく解説しておられます。
 このIMTPを測定するにはフォースプレートという床反力を測定する機器が必要です。従来の研究用のフォースプレートの多くは、上下、左右、前後のすべての力を測定できる反面、取得される膨大なデータからトレーニング指導に必要なデータのみを効率よく得るには不向きな上に高額という問題がありました。
 また、IMTPの重要性については理解されていましたが、実際に測定するためには膝や股関節角度を個人ごとに一定にするためのラックの設定が決して容易ではなく、トレーニング環境におけるフォースプレートの取り回しにも不便だという問題がありました。
 しかし、オーストラリアのストレングストレーニングの研究で有名なEdith Cowan Universityの研究開発を背景として、サンプリング周波数10,000Hzという高精度でありながら、トレーニング指導に最も必要とされる垂直方向の床反力のみにフォーカスしたC-Forceが新たに登場しました。
 これは、ストレングストレーニングやCMJなどの測定で多用される動作を理解する上に不可欠なパラメータを左右脚別々に取得できるよう70×50cmという大きなサイズであって、かつ総重量10kgという携帯可能なカーボンファイバー製のフォースプレートです。
 国内販売価格も200万円を切る価格帯になっています。そして、ワンタッチで長さ調節が可能な伸縮性の全くない策具(rig)をフォースプレートの底面から軽量のバーに引っ掛けて両手に保持して引き上げる、というアイデアでIMTPが可能となっています。使用するノートPCから電源を得るため、文字通りいつでもどこでもIMTPの測定をすることができます。
 上述したVmaxproによるmRFDとこのIMPTにおけるRFDの関係など、今後さまざまな実践的な研究が現場レベルで数多く取り組まれ、パフォーマンス向上のためのストレングストレーニングのより効果的な方法の開発が一気に推し進められると思われます。
 

今後は単にデジタル技術を取り入れるだけではなく、データをどう生かすか、それによっていかにトレーニング指導の効率を高められるか、という競争に移行していくものと思われる。Vol.
トレーニング指導におけるDXの推進
 このように、VBTデバイス一つ取り上げても、単に挙上スピードを測るというだけのレベルを超えて、従来の大がかりな装置でしか知りえなかったストレングストレーニングのエクササイズ動作中のバイオメカニカルなデータが、現場の指導者の手元で簡単に取得でき分析できるようになっています。また、フォースプレートにしても、重くて値段が高くて複雑で面倒というものから、バッグに入れて携帯し、どこでも必要なデータにアクセスできるというようになっています。
 今後は単にデジタル技術を取り入れるだけではなく、そうしたデータをどう生かすか、それによっていかにトレーニング指導の効率を高められるか、という競争に移行していくでしょう。
 本稿で述べたRFD以外にも、単なるバーの直線的な挙上速度を測るという意味でのVelocity Based Trainingから、関節角度の可動範囲とその角速度に注目したAngular Velocity BasedTraining(A-VBT)や、エクセントリック局面の速度、高速の挙上動作全体における加速局面のみにフォーカスした速度計測などは、これまでは研究レベルでしか測定の対象となりませんでした。しかし、トレーニング効果をより高めるために考慮するべきことが指摘されてきたパラメータが現場のトレーニング指導者によって日常的に取得できる時代に入ってきています。
 これらについては、次号で詳しく紹介したいと思います。
※本稿で紹介した測定機器についての詳細は下記から見ることができます。

https://sandccorporation.com/enode

 

1.提言の全文はこちらからダウンロードすることが可能です。https://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-24-t290-5.pdf2.

長谷川裕 「スポーツにおける力の立ち上がり率(Rate of Force Development)の意味」JATI Express2009, Vol 15 p13.
 

 

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