#6 「より高く」だけではなく「より速く、かつより高く」跳ぶ能力の測定と評価1

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トレーニング指導者のためのパフォーマンス測定と評価 #6 RSIとRSImod

2022/07/10

トレーニング指導者のためのパフォーマンス測定と評価

#6 「より高く」だけではなく「より速く、かつより高く」跳ぶ能力の測定と評価1

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※上記記事はJATI EXPRESS No.89に掲載のものです。

【概要】

・反応筋力指数:RSI

・変形反応筋力指数:RSImod

・RSIとRSImodの測定

[スポーツサイエンスとテクノロジーの絶え間ない進歩によって、ますます現場のトレーニング指導で簡単に正確なデータが取得できるようになり、これまで以上に的確な判断、より効果的な指導ができるようになってきている]

これまで、ジャンプ能力については、いかに高く跳ぶかという跳躍高だけが主な関心事だった。

しかし、最新のスポーツサイエンスの研究やテクノロジーの進歩を背景として、スポーツパフォーマンスの特性やアスリートの能力評価法をより的確に反映した測定から得られる指標を用いた評価が普及してきている。

今回は、従来の「より高く」からさらに進化した「より速く、かつより高く」跳ぶ能力の測定と評価について紹介する。

従来、ジャンプ能力については、いかに高く跳ぶかという跳躍高だけが主な関心事でした。しかし、最新のスポーツサイエンスの研究やテクノロジーの進歩を背景として、スポーツパフォーマンスの特性やアスリートの能力評価法をより的確に反映した測定から得られる指標を用いた評価が普及してきています。

 

1.反応筋力指数
 下肢の爆発的筋力や弾性エネルギーの効率よい利用の指標として、反応筋力指数というものが広く用いられています。反応筋力指数は、2008年にFlanaganとComynsによって定式化された指標で、Reactive Strength Indexの略であるRSIという名称で広く知られています。
 RSIは、一定の高さ(10〜60㎝)の台上から落下して接地直後に高く跳びあがるドロップジャンプや、7~10回程度の連続的なリバウンドジャンプにおいて、できるだけ接地時間を短くしつつ、できるだけ高く跳び上がるように指示します。そうして得られた跳躍高を接地時間で割ることで簡単に得ることができます。ドロップジャンプでは単発のジャンプにおける跳躍高と接地時間、連続的なリバウンドジャンプではその最大値または数回分の平均値を用い次の式でRSIを求めます。

 

RSI(m/s)=跳躍高(m)÷接地時間(s) 

 

 かつては、マットスイッチやフォースプレートを用いることが多かったようですが、連続的に全力で跳び上がる際に常に同じ位置に着地できるとは限らず、前後左右に着地位置がずれるため、数10㎝幅の小さな面積のマットやフォースプレートでは選手の全力での跳躍運動を制限してしまうという問題点が指摘されていました。また、マットやフォースプレートの表面素材の保護という問題もあるため、陸上トラック、体育館フロア、テニスコート、土や芝のグラウンドといった普段スポーツを行っている場所で普段のシューズで測定することはできませんでした。
 しかし、ジャンプするサーフェイスを選ばないMyotest(スイス)やPUSH2.0(カナダ)といった加速度計を搭載した初期のVBT機器やOpto-JumpNext(イタリア)のような光学センサーを用いた測定機器の開発と世界的な普及により、面積やサーフェイスを選ばないスポーツ現場におけるRSIの評価が極めて容易となり、日本国内でもプロレベルのみならず、学校スポーツレベルにおいても広く普及してきました。
 RSIは、いかに短い接地時間でどれだけ高く跳びあがることができるか、を意味する指標であるため、リバウンドジャンプのパフォーマンスはもちろん、スプリントや方向転換等のパフォーマンスと非常に高い相関を示します。したがって、そうしたパフォーマンスに対する選手のポテンシャルを調べたり、プライオメトリクスのトレーニング効果を客観的に確認したり、あるいはリハビリテーションにおける爆発的筋力や弾性筋力の評価にも広く用いられるようになっています。

 

RSIは、いかに短い接地時間でどれだけ高く跳びあがることができるか、を意味する指標である。

 

 

2.変形反応筋力指数
 RSIは、このように、ドロップジャンプやリバウンドジャンプといった瞬間的な接地時間に対する跳躍高の比を用いて爆発的筋力や弾性筋力を評価するものですが、多くのスポーツにおける跳躍運動には、立位姿勢から沈み込んで切り返すという反動動作を用いて高く跳ぶ、という特徴を持つジャンプも頻繁に用いられます。バレーボールのブロックや、バスケットボールのリバウンドジャンプ、サッカーのジャンプヘッドなどでよく目にするこうしたジャンプはカウンタームーブメントジャンプと呼ばれ、Counter MovementJumpを略してCMJと表記されています。
 CMJの跳躍高は跳躍を必要とする実際のスポーツパフォーマンスを直接決定づけるだけではなく、その跳躍高やCMJの動作中に発揮される筋力やパワーが、スポーツパフォーマンスにおける他の様々な指標と高い相関関係を示すことから、スポーツで一般的に要求される爆発的な筋力やパワーの指標としても用いられてきました。
 このCMJの評価はこれまでいかに高く跳ぶかという跳躍高のみに限定されてきたのですが、ほとんどすべてのスポーツでみられるCMJの運動課題は、決して跳躍の高さが高ければそれだけでよいのではなく、いかに速く跳ぶかという要素を考慮する必要があります。相手や周りの状況の変化に素早く反応してなおかつ高く跳べるほうが有利になるからです。
 しかし、できるだけ高く跳び上がるためには、少々時間がかかってもしっかりとした反動動作によって地面にできるだけ大きな力を加えることが必要になる、すなわちできるだけ大きな力積を得る必要があるのも事実です。したがって、反動動作を開始してから跳び上がるまでの時間できるだけ短くし、なおかつ高く跳べる能力を持った選手が優れた選手であるということになります。
 この能力を評価するためには、CMJにおける動作開始から足が地面から離れる踏切の瞬間までの時間に対する跳躍高の比でみればよいことになります。これがEbbenとPetushekによって2010年に提唱されたRSImodという指標です。上述のRSIを変形した(modified)という意味で変形反応筋力指数と名付けられています。RSImodは、RSIにおける接地時間の代わりに、CMJにおける動作開始から踏切までの時間であるTime to takeoff、略してTTTを用います。

 

RSImod= CMJの跳躍高(m)÷TTT(s)

 

 例えば、跳躍高が40㎝として、0.9秒のTTTであれば、0.4(m)/0.90(s)= 0.44(m/s)となり、同じ跳躍高でも0.8秒というより短い時間で跳べれば0.4(m)/0.8(s)=0.5(m/s)となりますからRSImodはより優れているということになります。なお、高さの単位であるmを時間の単位であるsで割っていますからRSIもRSImodも単位はm/sとなり、一般的な速度の単位と同じになりますが、意味は全く異なりますので注意が必要です。
 このRSImodも、RSIと同様に、単にスポーツにおける跳躍動作だけに限定された能力の指標ではなく、それ自体が爆発的筋力やパワーあるいは弾性筋力の指標でもあるため、競技レベルや様々なパフォーマンスとの関係が研究されています。
Vmaxproを腰に専用ベルトで装着して行うRSImodの測定風景と、Vmaxproによるデータ表示画面。CMJの測定でRSIと表示される箇所はRSImodのこと。RSImodの0.76÷跳躍高0.534m=0.70で、この時のTTTは0.70秒だったことがわかる(写真は、大阪大学硬式野球部部長 藤田和樹准教授からの提供)。
 

3.RSIとRSImodの測定 
 筆者が2020年の12月にオンライン開催されたJATIの第15回トレーニング指導者研修・交流会でこのRSImodを初めて紹介した際には、すでにRSIの接地時間と跳躍高を現場で簡単に測るためのPUSH2.0に代表される加速度計は広く普及していました。しかし、RSIにおけるTTTは、沈み込みに始まる抜重局面から下向きの運動を制止するブレーキング局面というエクセントリック局面と、重心の最も低い位置から踏切までのコンセントリック局面という全体的な動作時間を正確に測定する必要があるため、どうしても力を直接測定できるフォースプレートが必要でした。
 当時、垂直方向の力を簡単に測定できる現場向きのフォースプレートが開発され、価格も少しは安くなっていたのですが、現実的には誰にでもすぐに購入できるものではありませんでした。 しかし、今月、VBT機器の一つであるVmaxpro(ドイツ)に、新たにRSIとRSImodが正式に加わったことにより、RSImodは誰にでもすぐに測定可能なものになったといえます。
 一般にドロップジャンプやリバウンドジャンプそしてCMJにおける跳躍高は、滞空時間によって計算されます。この計算式の詳細な原理はここでは省略しますが、跳躍高を滞空時間で求める式は下のようになります。

 

跳躍高(m)=1/8gT²gは重力加速度(9.81m/s)、Tは滞空時間

 

 これに対して、Vmaxproの採用しているアルゴリズムは、こうした滞空時間からではなく、被験者の生み出す垂直の力が0になった時点、すなわち離地の瞬間からの垂直方向の速度を積分して最高点の位置を直接的に求めるという方法を取っています。これにより、落下局面で膝を曲げることで滞空時間全体が延長してしまうことによる誤差が生じないようにしています。そのため、Vmaxproの跳躍高は、フォースプレート(C-Force)を用いて得られる踏切時のコンセントリック局面の力積を体重で割って得られる初速度から求めたより正確な跳躍高との間に非常に高い相関を示すことも明らかにされています。
 また、Vmaxproで得られるRSIとRSImodの値は、同時測定されたフォースプレート(C-Force)上で得られるそれらの値との間に非常に高い相関係数が示されています。したがって、VmaxproによるRSIとRSImodはトレーニング指導の現場での爆発的筋力や弾性筋力、そしてより素早く短い時間でいかに高く跳べるかという能力の正確な評価に十分使えるかつ手軽なデバイスであるといえます。
 このように、スポーツサイエンスとテクノロジーの絶え間ない進歩によって、ますます現場のトレーニング指導で簡単に正確なデータが取得できるようになり、これまで以上に的確な判断、より効果的な指導ができるようになってきています。
 次回は、RSImodに関する最新の研究を取り上げ、より速くかつより高く跳ぶための能力の実態を詳しく解説したいと思います。

スポーツサイエンスとテクノロジーの絶え間ない進歩によって、ますます現場のトレーニング指導で簡単に正確なデータが取得できるようになり、これまで以上に的確な判断、より効果的な指導ができるようになってきている。

 

参考文献
1.Flanagan, EP and Comyns, TM. The use of contact timeand the reactive strength index to optimize faststretch-shortening cycle training. Strength Cond J 30:32–38, 2008.
2.Ebben, WP and Petushek, EJ. Using the reactivest1rength index modified to evaluate plyometric performance.J Strength Cond Res 24: 1983–1987, 2010.
 

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